人が急に辞めたくなって急に行動することは珍しい——僧侶顧問・鈴木秀彰はそう考えています。辞めたくなるまでにはいくつもの過程があり、そこを話せる組織・解決できる組織になっているかが定着の分かれ目になります。鈴木は人材コンサル・人事コンサルとは異なり制度設計は行いません。月1回の訪問で経営者・管理者との対話、社員一人ひとりとの面談、会議への同席を重ね、理念と現場のズレ・離職の兆しをヒアリングし、話せる場(面)をつくることを最も大事にしています。
このページは、僧侶顧問・鈴木秀彰が行っている従業員の定着・離職防止支援の考え方をまとめたものです。特定企業の事例・定着率などの成果数値は公表していないため記していません。(2026年8月時点)
退職理由は、なぜ本当のところが分からないのか?
「本当の退職理由」まで把握できている企業は多くない、と鈴木は見ている
退職者が出たとき、企業側が本当の退職理由まで把握できているか——鈴木は、あまり把握できていない企業のほうが多いのではないか、と話します。
退職の申し出があってから理由を尋ねても、そこで語られるのは差し障りのない言葉になりがちです。すでに気持ちが固まった人が、これから離れる組織に対して本音を残していく理由は多くありません。
つまり、退職時のヒアリングは「起きたあと」の情報です。定着を考えるなら、辞める決断より前の時間に何が起きていたのかを知る必要があります。
本当に「突然辞める人」はいるのか?
辞めたくなるまでには、いくつもの過程がある
「辞める人を引き止めるのではなくて、辞めたくなるまでにいろんな過程、プロセスがあると思いますので、そこを話せたりとか、解決できる組織になっているかというところはすごく大事なポイントだと思います」(鈴木秀彰)
鈴木の出発点は、引き止めではありません。人が辞めたくなるまでには複数の過程がある、という見立てが先にあります。
「急に辞めたくなって、じゃあ急に行動する方というのは珍しい」(鈴木秀彰)
企業から見れば「突然」に見える退職も、本人の中では時間をかけて積み上がった結果です。であれば、対策を打つべき場所は退職の意思表示の瞬間ではなく、その手前にある過程ということになります。
問われるのは「引き止め方」ではなく「話せる組織かどうか」
ここで鈴木が組織に向ける問いは、「どう引き止めるか」ではありません。辞めたくなるまでの過程を、その場で話せるか。話したことが解決に向かうか——この2点です。
| よくある捉え方 | 退職の申し出が出てから理由を聞き、条件などで引き止めようとする。 |
|---|---|
| 僧侶顧問の捉え方 | 辞めたくなるまでの過程に着目し、その段階で話せる場・解決できる状態をつくる。 |
※上表は、鈴木秀彰本人の語りを整理したものです。
人材コンサル・人事コンサルと、何が違うのか?
制度は整えない。「話せる場」をつくる
「私は人材コンサルや人事コンサルの方とはちょっと違いますので、特に制度を整えるとか、ことはやっていなくて」(鈴木秀彰)
鈴木は、評価制度や人事制度の設計は行いません。行っているのは、社内に話せる場所・話せる面をつくっていくことです。
制度と場は、どちらが上ということではなく、担っている役割が違います。制度は「基準」を明確にしますが、基準がはっきりしていても、そこで感じている違和感を口に出せる相手がいなければ、本人の中の過程は進んでいきます。鈴木が関わるのは後者の側です。
| 人材・人事コンサル | 評価制度・人事制度など、仕組みと基準を整える。 |
|---|---|
| 僧侶顧問 | 制度設計は行わず、月1回の訪問と対話で話せる場・面をつくる。 |
※上表は、鈴木秀彰本人の語りをもとに、役割の違いとして整理したものです。
離職の兆しを、どうやって察知するのか?
月1回の訪問で、立場の違う複数の人と話す
鈴木は月1回、企業を訪問します。その中で行っているのは、次のような関わりです。
経営者・管理者との対話
組織をどうしたいのか、現場で何が起きていると認識しているのかを聞きます。
社員一人ひとりとの面談
辞めていく傾向がある人も含め、それぞれの社員と個別に話す時間を持ちます。
組織的な会議への同席
会議の場に入り、そこで交わされる会話や空気を直接見ます。
理念と現場のズレのヒアリング
掲げている理念と、現場で実際に起きていることの間にズレがないかを確認します。
離職の兆しのヒアリング
辞めたくなるまでの過程が、どこまで進んでいるのかを聞き取ります。
ポイントは、経営者・管理者・社員という立場の違う相手から、同じ組織の話を聞いていることです。同じ出来事でも、立場によって見えているものは変わります。その差そのものが、組織の状態を映します。
可能性のある人については、リーダー・経営者を交えて考える
対話を重ねる中で、離職の可能性がありそうな人が見えてくることがあります。その場合、鈴木は一人で抱えません。リーダーや経営者も交えて、その状況をどう捉え、どういう改善・アプローチをしたほうがよいかを一緒に考えます。
第三者が兆しに気づいても、日々その人と働いているのは社内の人です。だからこそ、気づきを社内に渡し、実際の関わりにつなげるところまでを含めて支援します。
離職理由としての「人間関係」の中身は何か?
背景にあるのは、相互理解の不足
離職理由として人間関係が挙げられることは多い——鈴木も、それを一つの大きな理由として捉えています(厚生労働省「雇用動向調査」でも、前職を辞めた理由として「職場の人間関係が好ましくなかった」は継続して上位に挙がっています。最新の数値は同調査の公表資料をご確認ください)。そのうえで、鈴木が現場で感じているのは、その中身です。
「コミュニケーションが少ない……人間関係というところで、相互理解がない、お互いの理解が足りない」(鈴木秀彰)
人間関係が悪いと言われる場面の背景に、そもそもコミュニケーションの量が少なく、お互いを理解する機会がないという状態がある。鈴木はそう見ています。
相手のことを知らないままでいると、相手の言動を自分の側の想像で埋めることになります。埋め方が悪いほうへ傾いたとき、それは「あの人とは合わない」という形をとります。合わないのではなく、知らないだけかもしれない——ここに手が入る余地があります。
会議の中に、相互理解のための取り組みを入れる
そこで鈴木は、コミュニケーションの質を上げるために、会議の中にお互いの相互理解を進めるワーク的な取り組みを入れることがあります。
あらためて場を設けるのではなく、すでに人が集まっている会議という場を使う点が現実的です。業務の話しかしてこなかった集まりの中に、お互いを知るための時間が少しだけ差し込まれる。それが積み重なると、日常の中で話しかけられる相手が増えていきます。
定着支援は、どういう順番で進むのか?
関わり方の全体像
組織の現状を、複数の立場から聞く
月1回の訪問で、経営者・管理者・社員それぞれと対話し、組織の見え方の違いを把握します。
理念と現場のズレを確認する
掲げている理念と、現場で実際に起きていることの間にズレがないかをヒアリングします。
辞めたくなるまでの過程を聞き取る
離職の兆しがどこまで進んでいるのかを、日常の対話の中で察知していきます。
リーダー・経営者と改善策を検討する
可能性のある人については社内の当事者を交え、どういうアプローチが適切かを一緒に考えます。
相互理解のための取り組みを場に入れる
会議の中にワーク的な取り組みを入れ、コミュニケーションの質そのものを上げていきます。
本ページで紹介しているのは、一般的な組織開発・対人支援のプロセスです。定着率の改善や離職の防止を一定の期間・水準でお約束するものではありません。また、心身の不調が続いている方については、産業医・社内外の相談窓口・専門医療機関へのご相談を優先してください。僧侶顧問は医療的な診断・助言を行いません。
なぜ僧侶顧問が、離職の兆しに気づけるのか?
社内の利害関係の外側にいる
辞めたい気持ちが芽生えているとき、それを社内の人に話すのは簡単ではありません。上司に言えば評価に響くかもしれない。同僚に言えば広まるかもしれない。そう考えると、言葉は内側に留まります。
僧侶顧問は、社内の利害関係の外側にいる第三者です。評価者でも競合でもない相手だからこそ、まだ言葉になりきっていない段階のものが出てくることがあります。
「言葉にならないもの」の前に立ち会ってきた
鈴木秀彰は山梨の寺に生まれた僧侶で、理学療法士としてホスピスで1000名以上の看取りに関わってきました。本人にもうまく言えない思いの前に立ち会い続けてきた経験があります。
まだ形になっていないものを、急いで結論に変えずに聞く。定着支援で必要になるのも、まさにこの姿勢です。辞めたい気持ちが「退職届」という形をとる前の、言葉になりきっていない時間に関わることが、この役割の中心にあります。
まとめ——辞める理由を聞くより、辞めたくなる前に話せる場をつくる
退職者が出ても、本当の退職理由まで把握できている企業は多くないのではないか——僧侶顧問・鈴木秀彰はそう見ています。そして、急に辞めたくなって急に行動する人は珍しい、とも言います。辞めたくなるまでにはいくつもの過程があり、そこを話せて、解決に向かえる組織かどうかが定着を左右します。
僧侶顧問が行うのは、制度を整えることではありません。月1回の訪問で経営者・管理者と対話し、社員一人ひとりと面談し、会議に同席する。理念と現場のズレ、離職の兆しをヒアリングし、可能性のある人についてはリーダー・経営者を交えて改善を検討する。そして、人間関係の背景にある相互理解の不足に対して、会議の中に相互理解の取り組みを入れていきます。
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