職場の人間関係が悪化するのは最初からではなく、日々の積み重ねの結果です。僧侶顧問・鈴木秀彰は、AさんにBさんのことを聞くのではなく、まずAさん自身を理解することから始めます。そして当事者の声をそのまま鵜呑みにせず、月1回の社内訪問で実際の雰囲気を観察し、事実を把握することを最優先にしています。疑問が湧いても直接問いたださず、あらためて本人と話す場を持って違和感を解消していきます。
このページは、僧侶顧問・鈴木秀彰が行っている職場の人間関係改善支援の考え方をまとめたものです。特定企業の事例や成果数値は公表していないため記していません。(2026年8月時点)
職場の人間関係は、なぜ悪くなるのか?
最初からではなく、日々の積み重ねでそうなる
職場の人間関係は離職の理由の一つとして大きい——鈴木は、各種のアンケートや企業の調査を通じて広く知られていることとして、そう話します。鈴木が現場で見ているのは、その「悪い状態」の中身です。
上司との関係が悪い。本音で話せない。ギクシャクしている。相談ができない。こんな人には話したくない——挙げられるのは、こうした状態です。
ただし鈴木は、最初からそうだった人はなかなか少ない、と言います。
日々のやりとりの積み重ねの結果として、関係性がそうなっていく——これが鈴木の見立てです。だからこそ日々のコミュニケーションがとても大事だ、と鈴木は言います。ただし実際には、関係がある程度悪くなってしまった段階で相談を受けることになります。
関係が悪い二人に、どう関わるのか?
Aさんに「Bさんのこと」を聞かない
AさんとBさんの関係が悪い。この状態に対して、鈴木がまず行うことは意外に思われるかもしれません。
「まずAさんを理解し、Bさんを理解するということを始めます」(鈴木秀彰)
AさんにBさんのことを聞くのではない。Bさんの中にあるAさん像を聞くのでもない。まずAさん自身を、そしてBさん自身を理解するところから入ります。
相手の話から聞き始めると、その時点で「相手をどう変えるか」という枠組みに入ってしまいます。しかし人間関係は、相手を動かすことで解決するとは限りません。だから鈴木は、まず本人がどういう人で、何を大事にしていて、どういう状態にあるのかを理解することを先に置きます。
もちろん、話を聞くなかでAさんの口からBさんの話が出てくることもあります。それはそれとして受け取りながら、軸は本人の理解に置き続けます。
「どういう関係性を結びたいか」を、本人に理解してもらう
次に鈴木が重視するのが、本人が理想とする関係性を本人自身に理解してもらうことです。
職場には、上司と部下という関係もあれば、同僚として一緒に仕事をしていく関係もあります。相手との間に、どういう関係を結べたらよいのか。ここが曖昧なまま「関係が悪い」とだけ感じていると、改善の方向も定まりません。
そのうえで、鈴木は仕事の成果から逆算します。自分がやりたいこと、自分が理想とする成果、会社として求められている成果——そこに向かうために、Bさんとどう連携していけばよいのか。関係改善を「仲良くなること」ではなく、仕事がしやすくなるための相互理解として扱う視点です。
この見方をとると、選択肢が広がります。Bさんとの連携の仕方を変えるという道もあれば、Cさんという別の人が関わってくる道もある。そもそも部署の構造に問題があるなら、それを自分から会社に提案していく、ということも実際にあります。
なぜ二人の話だけでは足りないのか?
2人だけの問題でないことがある
鈴木が当事者の話だけで判断しないのには、理由があります。人間関係の問題は、当事者2人だけで閉じていないことが実際にあるからです。
そこで、社内の雰囲気を見て、関係する周囲の人たちの意見も聞きます。誰と誰の間に何が起きているのか。その二人の関係が、部署全体の状態のあらわれになっていないか。視野を広げて確認していきます。
当事者の声を、そのまま鵜呑みにしない
「本人たちの声をそのまま受け取るというか、鵜呑みにしないということも大事です」(鈴木秀彰)
鈴木は当事者ではありません。だから、聞いた話をそのまま事実として扱うことを避けます。これは相手を疑うということではなく、人は誰でも自分の見え方を通してしか語れないという前提に立つということです。
では、どうやって確かめるのか。ここで現場観察が入ります。
現場では、何を確かめているのか?
月1回の訪問で、実際の雰囲気を観察する
「実際に社内に月1回私は訪問させていただいております」(鈴木秀彰)
鈴木は月1回、社内を訪問します。その場で感じるもの、観察できるものがある。ヒアリングで聞いた話と、現場で見えるものを照らし合わせていきます。
結果は、二通りに分かれます。「なるほど、Aさんが言っていたのはこういうことだったのか」と理解が深まることもあれば、「Aさんが言っていたことは、少し違うのではないか」という疑問が湧くこともあります。
| 観察して腑に落ちる場合 | Aさんの話の意味が現場で確認でき、理解が深まる。 |
|---|---|
| 観察して疑問が湧く場合 | 聞いた話と現場の様子にずれがある。直接問いたださず、あらためて本人と話す機会を持って違和感を解消していく。 |
※上表は、鈴木秀彰本人の語りを整理したものです。
疑問が湧いても、直接は問いたださない
疑問が湧いたとき、鈴木はそれを直接ぶつけることはあまりありません。「あなたはああ言いましたが、実際は違うようですね」と確認することは、まずしない。
代わりに、その違和感を解消するために、あらためてAさん本人と話す機会を持ちます。話すなかで、その人が何を大事にしていて、どこに引っかかっているのかが見えてくる。急いで白黒をつけにいかず、本人の言葉が出てくるのを待つ——第三者だからこそ選べる進め方です。
「事実を事実として受け止められない」とは、どういうことか?
「こうあるべきだ」が、事実の見え方を変えてしまう
鈴木が問題の根に見ているのは、その人の中にある信念です。仏教的な言い方になるかもしれない、と断りながら、こう語ります。
「こうしなければいけない」「こうあるべきだ」という価値観が、自分の中で信念のような強さを持つ。すると、その色眼鏡を通してしか出来事を見られなくなる。
「事実を事実で受け止められていないということもあるかなと思っていますので、まず一番大事にしているのは、事実をまず把握する」(鈴木秀彰)
同じ出来事でも、その人が何を「こうあるべきだ」と思っているかによって、受け止め方は変わります。そして本人にとっては、それは解釈ではなく事実として感じられています。
だから鈴木は、現場で起きていることの実際の現状を把握することを最優先にします。事実の共有ができていない場所では、どんな対話の技術も空回りするからです。
ここで扱っているのは、あくまで「何が起きたのか」を先に確かめるという順序の話です。ハラスメントや不当な扱いなど実害が生じている場合は、受け止め方の問題として扱いません。事実を確認したうえで、会社として対処すべき問題として扱います。
職場の人間関係改善は、どう進むのか?
関わり方の全体像
当事者それぞれを理解する
相手について聞くのではなく、まずAさん自身、Bさん自身がどういう人で何を大事にしているのかを理解します。
理想の関係性を本人に理解してもらう
相手とどういう関係を結べたら仕事がしやすいのかを、成果から逆算して本人と整理します。
周囲の意見と社内の雰囲気を見る
2人だけの問題でない場合もあるため、関係する周囲の人の意見や社内の空気も確認します。
月1回の訪問で現場を観察する
聞いた話を鵜呑みにせず、実際の現場で感じ取れるもの・観察できるものと照らし合わせます。
事実を把握したうえで、次の手を考える
連携の仕方を変える、別の人が関わる、部署の構造を会社に提案する——事実に基づいて選択肢を検討します。
本ページで紹介しているのは、一般的な対人支援・組織開発のプロセスです。ハラスメントが疑われるケースや、心身の不調が続いている場合は、産業医・社内外の相談窓口・専門医療機関へのご相談を優先してください。僧侶顧問は医療的な診断・助言を行いません。また、関わり方は組織の状況によって異なるため、一定の期間や成果をお約束するものではありません。
なぜ僧侶顧問が、人間関係の間に立てるのか?
社内の利害関係の外側から関わる
社内の人が間に入ると、どうしても利害が絡みます。当事者は「どう見られるか」を意識しながら話すことになります。
僧侶顧問は、社内の利害関係の外側にいる第三者です。だからこそ、AさんにもBさんにも同じ距離で向き合える。片方の立場に寄らずに両方の言葉を受け取れることが、この役割の前提になります。
「事実を見る」ことを、繰り返してきた
鈴木秀彰は山梨の寺に生まれた僧侶で、理学療法士としてホスピスで多くの看取りに関わってきました。人がどうしても受け止めきれない出来事の前に立ち会い続けてきた経験があります。
「こうあるべきだ」という思いと、目の前で起きている事実。その二つのずれに向き合う——僧侶が長く扱ってきたのは、まさにこの領域です。職場の人間関係も、根の部分では同じ構造を持っています。
まとめ——まず事実を把握することから始まる
職場の人間関係は、最初から悪かったわけではなく、日々の積み重ねの結果としてそうなっていきます。すでにこじれた段階で相談を受けることが多いなかで、僧侶顧問・鈴木秀彰がとるのは、相手を変えにいかないアプローチです。
AさんにBさんのことを聞くのではなく、まずAさん自身を理解する。本人がどういう関係性を結びたいのかを、本人に理解してもらう。2人だけの問題とは限らないので、周囲の意見と社内の雰囲気も見る。そして当事者の声を鵜呑みにせず、月1回の訪問で現場を観察し、聞いた話と照らし合わせる。
その根にあるのは、「事実を事実として受け止める」という一点です。「こうあるべきだ」という信念が事実の見え方を変えてしまうことがあるからこそ、鈴木はまず現場で起きていることの把握を最優先にしています。
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