「こんなリーダーではいけない」「部下がかわいそうだ」と自分を責める管理職に、僧侶顧問・鈴木秀彰がまず行うのは、「できていないのではなく、理想が高いだけ」と捉え直すことです。次に、視点を「ダメ出し」から「理想に近づくために何が必要か」へ切り替え、腑に落ちていなかったミッション・バリューを当事者意識になるまで言葉にし、最後に理想のチーム像を絵で描けるくらい具体化する。この順で、自信は少しずつ戻ることがあります。
これは、僧侶顧問・鈴木秀彰がある大手企業の部長を支援したケースにもとづくコラムです。企業名・部署名・人数などは本人が特定していないため記していません。自分を責める状態から、楽しく仕事に向かえる状態へ——その関わり方をたどります。(2026年7月時点)
「自分はダメなリーダーだ」と思い込むのは、なぜか?
まず口をついて出たのが、自分への否定だった
相談に来たのは、ある大手企業の部長でした。自分のリーダーシップ、マネジメント、部下との関わり方に不安と悩みを抱えていました。鈴木が印象的だったと語るのは、その人が最初に口にした言葉です。
「自分がこんなリーダーではいけない、こんなマネージメントではいけない、部下がかわいそうだ。」(鈴木秀彰)
口ぐせのように、まず自分を否定する。相談の入口が「自分はダメだ」から始まっていたのです。鈴木はここで励ますのではなく、「なぜそう思うのか」を明確にすることから入りました。責める気持ちの根っこを見に行った、という順番です。
「できていない」と「理想が高い」は、何が違うのか?
捉え直すだけで、同じ事実が反転する
話を聞いていく中で、鈴木の見立てははっきりしていきます。この人は、できていないのではない。既にできているのに、理想(完璧・100点)が高すぎて、それに届かない自分を責めているだけだ——。あるいは、できないのではなく、まだ"していなかった"だけだ、と。
「できていないんじゃなくて……理想が高いんだな。」(鈴木秀彰)
「できていない」と「理想が高い」は、指している事実は同じでも、意味が正反対です。前者は欠如の証明になり、自信を削ります。後者は、高い基準を持っているという長所の証明になります。捉え直すだけで、同じ状態が「弱み」から「伸びしろ」へ反転する。鈴木がまず行ったのは、この反転でした。
視点を「ダメ出し」から「何が必要か」へ切り替える
捉え直したうえで、鈴木は視点そのものを切り替えさせます。
「理想に近づくために自分はどうすればいいのか、何が必要なのかという視点を切り替える。」(鈴木秀彰)
「自分はダメだ」という視点にとどまる限り、出てくるのはダメ出しの材料ばかりです。一方、「理想に近づくために何が必要か」という視点に立つと、同じ現状から具体的な打ち手が見えてきます。自己否定は前に進みませんが、必要なもののリストは前に進みます。視点の置き場所を変えることが、行動を変える起点になる、という関わり方です。
ミッション・バリューは、なぜ「腑に落ちて」初めて機能するのか?
言葉として知っているだけでは、当事者になれない
関わりを進める中で、鈴木はもう一つの根っこに気づきます。その大手企業のミッション・バリュー(理念・土台)が、本人にちゃんと腑に落ちていなかったのです。
「ミッションバリューの話で……ご自身がすごく腑に落ちていなかった……当事者意識を持つ。」(鈴木秀彰)
理念は、掲げられているだけでは働きません。本人が腑に落とし、当事者意識になって初めて、日々の判断の土台になります。鈴木は、理念を明確にし、言葉にし、当事者意識を持ってもらう関わりをしました。その際に大事にしたのは、個人の価値観と法人の価値観の双方を明確にし、両者が交われる点を探すことです。会社の理念に自分を無理に合わせるのではなく、自分の価値観と重なる場所を見つける。そこが、当事者意識の生まれる地点になります。
「理想のチーム像」は、どこまで具体化するのか?
言葉だけでなく、絵で描けるくらいまで
最後に鈴木が行ったのは、リーダーとして・チームとして「どういう状態でありたいか」というゴールの明確化でした。ただし、ふわりとした言葉では止めません。
「言葉だけじゃなくて、より具体的に絵で描けるように明確にした。」(鈴木秀彰)
理想を「絵で描けるくらい」具体化すると、日々の行動がそのゴールに向かって並び始めます。抽象的な理想は自分を責める材料になりますが、具体的な理想は目指す先になります。同じ「高い理想」でも、輪郭を持たせるかどうかで、苦しみの種にも推進力にもなる、ということです。
| 1. 捉え直す | 「できていない」のではなく「理想が高いだけ/まだしていないだけ」と捉え直す。 |
|---|---|
| 2. 視点を切り替える | ダメ出しから「理想に近づくために何が必要か」へ。 |
| 3. 理念を当事者意識に | ミッション・バリューを言葉にし、個人と法人の価値観が交わる点を探す。 |
| 4. 理想を具体化 | 理想のチーム像を、絵で描けるくらい具体的にする。 |
※上表は、鈴木秀彰本人が支援で用いた流れを整理したものです。この関わりで必ず自信がつく・チームが変わるという保証ではありません。
この話は、どんな管理職に当てはまるのか?
理想が高い人ほど、自分を過小評価しやすい
自分を責める管理職は、能力が低いのではなく、むしろ理想が高いことが多いものです。基準が高いからこそ、そこに届かない自分が目につく。放っておくと、自信を失い、その不安が部下との関わりにも影を落とします。
だからこそ、最初の一手は「もっと頑張る」ではなく「捉え直す」ことです。できていないのか、それとも理想が高いだけなのか。この問いを一度くぐるだけで、見える景色が変わります。このケースでは、支援を経て本人が自信を持ち、楽しく仕事に向かう姿へ変わっていきました。ただしこれは一つの事例であり、同じ関わりが誰にでも同じ結果をもたらすわけではありません。
まとめ——高い理想は、責める材料ではなく目指す先にする
「こんなリーダーではいけない」と自分を責める管理職に、僧侶顧問・鈴木秀彰がまず伝えたのは「できていないのではなく、理想が高いだけ」という捉え直しでした。そこから視点をダメ出しから「何が必要か」へ切り替え、腑に落ちていなかった理念を当事者意識にし、理想のチーム像を絵で描けるまで具体化する。
高い理想そのものは、悪いものではありません。輪郭を持たせて「目指す先」にすれば推進力になり、輪郭のないまま「届かない自分」を測る物差しにすれば、自信を削る材料になる。どちらに使うかで、同じ理想の意味が変わる——それが、このケースが示していることでした。
僧侶顧問は、リーダーや管理職の隣で、答えを急がずに問いを重ねます。自分を責める言葉が口ぐせになったとき、外側から捉え直す時間が役に立つことがあります。
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