Succession

親子の事業承継、何を継ぎ何を継がないか

後継者だった僧侶が、間に立つ

親には親の期待があり、子には子の思いがある。それでも言葉にならない。僧侶顧問・鈴木秀彰は、自身も実家の寺で「継がない」決断をした後継者の一人として、親子の承継に第三者として関わります。

この記事の要点

親子間の事業承継で難しいのは、株式や制度よりも「言葉にならない部分」です。僧侶顧問・鈴木秀彰は、親子を同じ場に座らせるところから始めず、まず先代と後継者それぞれの言葉を個別に聞きます。二人の話に共通して出てくる部分を「継ぐべきもの」とし、言葉にできていない部分を言語化していく。そして「親子の問題」と「会社の問題」を切り分ける。鈴木自身、実家の寺で継がない決断をした当事者です。

このページは、僧侶顧問・鈴木秀彰が行っている親子間の事業承継支援の考え方をまとめたものです。本ページで扱うのは対話と関係性の支援であり、株式・相続・税務・法務に関する専門的な助言ではありません。これらについては税理士・弁護士など各分野の専門家への相談が別途必要です。(2026年8月時点)

なぜ親子の事業承継は、こじれやすいのか?

期待も思いもあるのに、言葉にできない

和室で向かい合い静かに対話する二人の日本人。畳と余白、穏やかな光

家族で経営を続けてきた企業には、代を重ねてつないできたものがある——鈴木はそう捉えています。そのうえで、あらためて注目を浴びているテーマとして挙げるのが、親子間の事業承継です。鈴木のもとにも、この相談が寄せられることがあります。

難しさの中心にあるのは、株式や制度の話ではありません。親子だからこそ生じる、言葉にならない領域です。

親には子への期待があります。子には親への思いがあります。それでも、当たり前に一緒に過ごしてきた関係だからこそ、あらためて口に出せない。分かってもらいたいのに、伝わらない。鈴木は、この状態がそのまま経営判断の場に持ち込まれてしまうところに、親子承継の難しさを見ています。

なぜ僧侶顧問が、事業承継に関われるのか?

自分自身が、寺を「継がない」と決めた後継者だった

鈴木がこのテーマに関わる背景には、本人の一次体験があります。

「親子間での事業承継を結果的には継ぐという決断をしなかったものとして一人ではございます」(鈴木秀彰)

鈴木は寺に生まれ、後継者の一人でした。そして結果として、継ぐという決断をしませんでした。当時は父との関わり方に悩んでいたと語ります。継ぐか継がないかを迷う側の苦しさを、外から見て理解したのではなく、自分の問題として通ってきた。この経験が、相談を受ける際の土台になっています。

「継承」と「承継」——言葉の違いから見えること

鈴木は、言葉の使い分けにも触れています。僧侶の世界で馴染みがあるのは「継承」で、これは文化や形のない無形のものを継いでいくときに使う言葉です。一方、企業で一般に用いられるのは「承継」。本来はそちらを使うのが適切とされているそうです。

この違いは、単なる用語の問題ではありません。事業を継ぐという行為には、事業や資産を継ぐ側面と、無形のものを継ぐ側面の両方があるということを示しています。鈴木が関わるのは、主に後者——制度設計では扱いきれない領域です。

継承僧侶にとって馴染みのある言葉。文化や形のない無形のものを継いでいくときに使う。
承継企業において一般に用いられる言葉。本来はこちらを使うのが適切とされる。

※上表は、鈴木秀彰本人の語りを整理したものです。

承継支援は、何から始めるのか?

同じ土俵に立たせず、まずそれぞれの言葉を聞く

鈴木のアプローチは、親子を同じ場に座らせて話し合わせることから始まりません。まず、先代と後継者それぞれの言葉を個別に聞くところから入ります。

これは順序の問題として重要です。言葉にできていない状態のまま同席してもらうと、その場で出てくるのは「言える範囲のこと」にとどまりやすい。個別に聞くことで、まだ形になっていない思いまで拾えるようにします。鈴木は、こうした場面での第三者的な関わり方を大事にしていると語ります。

二人の話で「重なる部分」が、継ぐべきもの

個別に聞いた話のなかで、二人から共通して出てくる部分があります。鈴木は、そこがおそらく承継すべき部分だと考えます。

逆に、それぞれが感じてはいるものの言葉にできていない部分もあります。「本当はここが大事なのではないか」と感じ取れることがあるので、その部分を実際に言語化したり、本人に確認したりします。

そのうえで明確にしていくのが、「継ぐものは継ぐもの、継がないものは継がないもの」という線引きです。すべてをそのまま引き継ぐことも、すべてを刷新することも、承継の答えではありません。何を残し、何を手放すかを言葉にすること自体が、承継の中身になります。

ナンバー2・右腕にも話を聞く

企業の規模によっては、経営者以外の社員にも話を聞きます。いわゆるナンバー2、右腕としてサポートしてきた方です。

こうした方が承継のキーパーソンになることは少なくありません。継ぐ方・継がれる方それぞれをどう捉えているのか、人間性や関係性はどうか。第三者的な目線でそこを確認したうえで、どういう形で承継していくのがよいかを一緒に考えていきます。

「親子の問題」と「会社の問題」は、どう切り分けるのか?

親子関係を壊さないことが、最優先にある

山あいの古い日本のお寺の静かな佇まいと朝の光

鈴木が最も大事にしていることは、はっきりしています。親子関係を壊さないことです。誰しもそれを望んでいないはずだ、というのが出発点です。

そのうえで、会社としてどうつながっていくかは別の問題として考える必要があります。

「ここは親子の問題なのかな、これは会社の問題なのかなというところは、非常に……大事にしております」(鈴木秀彰)

親子関係の話と、会社・事業としてどうつないでいくかの話は、本来は別のものです。鈴木は、いま出ている論点がどちらの問題なのかを見極めることを、話し合いを前に進める土台として重視しています。

その発言は、どの立場から出ているのか

切り分けを実務に落とすための、鈴木の具体的な着眼点があります。発言者がどの立場で話しているかを意識することです。

「……親として、子としての発言なのか、……社長として、後継者としての発言なのか、立場をわきまえる、立場を明確にする」(鈴木秀彰)

同じ人物が、話しているうちに立場を行き来します。親としての心配と、社長としての判断は、別のものです。この発言はどういう思いから出ているのかを確かめること。それだけで、こじれていた議論の輪郭がはっきりすることがあります。

親子としての発言親としての期待、子としての思い。感情や関係性に根ざしたもの。
経営者・後継者としての発言社長として、後継者としての判断。事業の継続に根ざしたもの。

※どちらが正しいという話ではなく、どちらの立場から出た言葉かを明確にすることを重視しています。

仏教の「執着」は、承継の何を照らすのか?

手放すことと、受け取ること

鈴木は、仏教の考え方を承継の整理に用います。鍵になるのが「執着」です。

「こだわっていることは何なのか、それにこだわりすぎていると手放すことができません」(鈴木秀彰)

そして、手放すということは受け取るということにも関わってくる、と続けます。先代が何かを手放さなければ、後継者は受け取れない。後継者が自分のこだわりを手放さなければ、先代の大事にしてきたものを受け取れない。承継とは、両側で同時に起きる手放しと受け取りだ、という見方です。

ここで扱われているのは、株式や資産ではなく、こだわりの中身です。何にこだわっているのかを本人が言葉にできれば、それが本当に継ぐべきものなのか、手放してよいものなのかを判断できるようになります。

文化・伝統も、承継すべき対象として扱う

忘れてはならないものとして鈴木が挙げるのが、その事業が伝統として守ってきたものです。大事な文化であり、伝統であるものは、承継していく対象のひとつだと考えています。

数字や仕組みに表れないため、承継の議論から抜け落ちやすい部分です。だからこそ、言葉にして確認する工程に含めています。

親子の事業承継で、僧侶顧問は何をするのか?

関わり方の全体像

それぞれの言葉を個別に聞く

継ぐ方・継がれる方を同じ土俵に立たせるのではなく、まず一人ずつ話を聞き、言葉になっていない思いまで拾います。

共通点を「継ぐべきもの」として整理する

二人の話に重なって出てくる部分を承継すべきものと捉え、言葉にできていない部分は言語化・確認します。

周囲のキーパーソンにも話を聞く

企業規模によっては、経営者を支えてきたナンバー2・右腕にもヒアリングし、第三者的な目線で関係性を確認します。

「継ぐもの/継がないもの」を明確にする

何を残し、何を手放すのかを線引きします。文化・伝統など無形のものも対象に含めます。

親子の問題と会社の問題を切り分ける

発言がどの立場から出ているのかを確かめながら、親子関係を壊さないことを最優先に話を進めます。

本ページで紹介しているのは、対話と関係性に関わる支援です。株式の移転、相続、税務、法務の手続きについては、税理士・弁護士・公認会計士など各分野の専門家にご相談ください。僧侶顧問はこれらの専門的助言を行いません。また、承継の進め方は企業の状況によって異なるため、一定の期間や成果をお約束するものではありません。

なぜ第三者が入ると、話が動くのか?

当事者同士では言葉にできない部分がある

親子は、関係が近いぶん率直に話せると思われがちですが、実際は逆のことが起こります。長く一緒に過ごしてきたからこそ、いまさら聞けない。傷つけたくないから言えない。期待が重いから応えられないと言えない。

そこに、親子関係の外にいる第三者が入ります。しかも鈴木の場合、かつて自分が後継者の一人として同じ迷いのなかにいました。だから継ぐ側の言葉も、継がれる側の思いも、どちらか一方に肩入れせずに受け取ることを心がけられる、と語ります。

僧侶顧問は、承継の答えを外から与える存在ではありません。二人が本当は何を継ぎたくて、何を手放したいのかを、本人たちの言葉として立ち上げていく。そのための間に立つ役割です。

まとめ——承継とは、何を継ぎ何を継がないかを言葉にすること

親子間の事業承継の難しさは、制度よりも「言葉にならない部分」にあります。親の期待、子の思い、それでも口に出せない距離。僧侶顧問・鈴木秀彰は、まずそれぞれの言葉を個別に聞き、共通して出てくる部分を継ぐべきものとして整理し、言葉にできていない部分を言語化していきます。

そして、親子の問題と会社の問題を切り分ける。その発言が親としてのものか、社長としてのものかを確かめる。仏教の「執着」の考え方を借りて、何にこだわり、何を手放すのかを整理する。守ってきた文化や伝統も、承継の対象として言葉にする。

鈴木自身、実家の寺で継がない決断をした後継者の一人です。継ぐか継がないかを迷った側の実感を持ちながら、親子関係を壊さないことを最優先に間に立ちます。

承継の話し合いが止まっている、あるいは何から始めればよいか分からない——そんな段階からご相談いただけます。

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